まず、個人所得課税の改正項目として浮上している所得控除関係では、給与所得控除の縮減が大きな影響を与えそうだ。現在の給与所得控除が、サラリーマンのいわゆる「必要経費」的なものとして位置づけられているにもかかわらず、収入金額に応じた一定割合を控除する仕組みとされていることに対して批判が出されており、控除額を縮減する一方で実額控除の適用範囲を拡大する方向が有力となっている。しかし、実際問題としてみた場合には、殆どの給与所得者に関して控除額が大幅に引き下げられる結果となることは避けられず、労働団体等からの反発は必死の情勢だ。
また、退職所得課税については、退職所得控除後の金額の2分の1が退職所得金額として分離課税されている点が問題となっており、課税強化の方向で検討作業が進められている。これについても、これまで行われた年金課税の強化や老年者控除の廃止、さらには年金支給額の抑制や年金保険料の引き上げ等の社会保険改革と相俟って不満が高まりそうだ。
さらに、中期的には住民税の現年課税への移行も俎上に上っているが、改正時点の負担調整をどうするのか、これまで課税されていなかった死亡した年分の所得に対する課税をどうするのか等の問題点がクローズアップされそうだ。